静かでポカポカといい日向ぼっこ日和、なんだが。

目の前に居る男は俺をジッと眺めながら、何かを口に運び無意識に一心不乱に食べて居る。

「おい、お前は何俺の顔を見て、イカそうめんを食べる様に俺の髪を食べてる」

「俺の大好きな恋人の顔を見ながらお前が散発して出た髪の毛を食べる事によって、お前を食べてる気分を味わってるんだ」

にこやかに答えた彼は、手を止めずジップロックに入れた髪を貪り食べる。

「全く分からない。髪を食べる理由じゃないだろ」

彼は整った顔を一瞬キョトンとさせ見つめてくる。

「お前は俺がカニバリズム者だって事、理解してないの?」

「あのさ、知ってて当たり前でしょ?みたいな顔しないで」

歯に髪が詰まったのか、綺麗な歯並びを惜しげもなく晒し、隙間に爪楊枝を入れている。

「前にも言ったが、お前を愛しているからこそ髪を食べているんだが?」

「最初までは、良かったただ最後はいらねー」

手元のクッションを投げつけるが、軽く避けられてしまう。

「自重などせずに髪ではなくお前を食ってやろうか?食ってしまえばお前は死ぬぞ。まぁそれでもいいけどさ。俺が殺してお前の全部食べる」

「もう喋んないで…。てか、殺すとか」

「カニバリズムとしては間違ってないぞ。死者への愛着から魂を受け継ぐという意味があるが」

「殺してる時点で、愛は無い気がするが」

髪を食べ終わったのか、ジップロックを持ち備え付けのキッチンへ置く。

「殺すのも愛のうちさ。でも、今殺さないのは一緒に居たいからだ」

長い髪をピンで上げ、無駄に決め顔をしてくる。

「受け継ぐ、そういう迷信は信じて無いけど、一緒になれるとは思ってるけど」

「んな事しなくたって」

「これは、簡単に言えば俺の自己満足。でも、その行為にカニバリズムと言う食人嗜好に走るのは愛やお前と一緒にいる実感がはっきりとわからない。だから、一番一緒になれるその行為を俺は選んだんだ」

こちらに近づき、顔のラインにそい撫でてくる。

「食べればいいだろ。俺と一緒に居るのに実感が出来ないのなら」

「食べたいね。でdもさ、それじゃ駄目なんだ。自分の中で決めた事も守れない」

何処か切なそうなその顔はヘラヘラとしたものは全くない。

「決めたって?」

「お前とはずっと居るって。お前の最後まで一緒に居るって」

「うん?」

「お前が死んだときにお前の体を食べるって」

愛した人を食べるって事は微妙だけどなと苦笑する。

「いいよ、食べて。それで俺の愛が伝わるってなら」

「ごめんな、こんな奴で」

「いいんだ。そんなお前が好きだから、一緒にいるんだ」

だってさ、そんなお前がさ、

「カニバリズム者だと知っても、お前の事を愛してるんだ」

大好きで、大好きで仕方ないんだ。



「あなたの事を

  
  「「愛してます」」 だから、俺は貴方に全てを捧げ、愛を誓います。